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終の棲家に選んだ階段。デザインだけじゃない、老後の安心を見据えた選択とは
子どもたちが巣立ち、定年後の暮らしを見据えるようになった頃、私たち夫婦が出した結論は「終の棲家は、自分たちの理想を詰め込んだ注文住宅にしよう」というものでした。
マンションや建売住宅も検討しましたが、人生の集大成ともいえる家づくりにおいて、細部にまで妥協はしたくない。そう考え、注文住宅という選択肢を選びました。
階段こそ、私のこだわりの象徴
数あるこだわりの中でも、私が特に情熱を注いだのが「階段」です。
若い頃から、映画に出てくるようなホールに大きくゆったりとカーブを描く階段に憧れていました。リビングの中心に、家族の歴史を刻んでいく象徴としての階段──それが私の注文住宅における最大のテーマだったのです。
妻の一言で目が覚めた。「その階段、老後も大丈夫?」
設計士さんとの打ち合わせでは、スケルトン階段や鉄骨階段など、デザイン性の高い提案も多くありました。
ですがある日、妻からこんな一言が。
「本当にそれでいいの?歳を重ねたとき、その階段は安全?」
その瞬間、憧れだけで突っ走っていた自分に現実的な視点が戻ってきました。
安全性と美しさの“両立”を目指して
そこから私たちは、デザイン性と安全性を兼ね備えた階段を目指すことにしました。
- 勾配は緩やかに
- 踏面は広く足をしっかり置けるように
- 手すりは両側に設置し、握りやすい無垢材製に
- 材質は足触りのいい天然木で温かみを
仕様を決めるまでに数ヶ月かかりましたが、「この時間こそが注文住宅の醍醐味」と心から感じています。
完成した階段と、日々の安心感
完成した階段は、想像以上に「日々の安心感」をもたらしてくれました。
朝日が差し込む窓から光が階段にこぼれ、木の温もりを感じながら上り下りする日常──それは、ただ美しいだけの階段では得られなかった、心からの安らぎです。
「この階段なら、おばあちゃんになっても安心して使えるね」
と笑う妻の言葉に、私たちの選択は間違っていなかったと確信しています。
階段は“未来への設計”でもある
家づくりにおいて、「たかが階段」と思われがちな部分かもしれません。
ですが、私たちにとって階段は将来の暮らしを見据えた象徴的な空間でした。
見た目だけでなく、10年後・20年後・30年後の自分たちの姿を想像して設計すること──それが、後悔のない家づくりにつながるのだと、今なら胸を張って言えます。
同世代の皆さんにも、ぜひ“今の憧れ”だけでなく“未来の自分”という視点を持って、家づくりを楽しんでいただきたいです。